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PTクアラルンプール 2008

プロに聞く
Nate Price

モーニングタイド参入のインパクトを肌で感じる今日この会場だが、それを語るのは私一人の手に余る。
難所の1つであるファースト・ラウンドを終えた世界のリミテッド巧者たちに、この環境の印象を語ってもらって、理解を深めていこう。

席に座っていただいた専門家の皆さんは、2007年度のヨーロッパ開催インビテーショナル王者のTiago Chan氏、先の個人リミテッドのプロツアー・ジュネーヴを制したMike Hron氏、magicthegathering.comのリミテッドを担当してもう9ヶ月のQuentin Martin氏です。

「モーニングタイドで環境の何が大きく代わったかと言えば、ローウィンから出る特定のカードが減った事だね。
すなわち、各種《先触れ》と《熟考漂い》」
Quentinが語る。
「コモンで強い《ゴブリン》も減っちゃった」

Tiagoはモーニングタイドで戦闘が大きく変わったと確信する。
「補強能力が一変させたな。
早いターンにアタッカーやブロッカーが補強されると、ゲームの流れが変わってしまう」

ドラフトではローウィンの部族がデッキのアーキタイプを決定付けるため、《マーフォーク》と《フェアリー》なんかで時折デッキが被り、しばしば足の引っ張り合いになる場面も見られた。
モーニングタイド環境もクリーチャー・タイプに関してはあまり変わる所はないのだが、職業タイプに照明が当てられた事で、ローウィンのカードの2番目のクリーチャー・タイプが突然重要な意味を持つようになった。
すでに提示されているテーマをモーニングタイドが促進する事で、新たな段階を演出してみせたのだ。
これこそリミテッドの探求であり、勉強嫌いとは対照的な、すでに別の環境を知り尽くしたプレイヤーにさえ、向上する余地が与えられる。
カード・セットが追加されるまでは全く新しいデッキが現れない構築戦とは違って、リミテッドならではの大インパクトだ。

一般的な見解として、モーニングタイドからまず出てくる新しいデッキは、ローウィン単一のドラフト・デッキからちょっとだけ枝分かれしたものになる。
「モーニングタイドで出てきたクリーチャー・タイプでは、《ならず者》が結構無視できなくなったな」
とHronが言う。
「《深海踏みのメロウ》とか《ベラドンナのとげ刺し》みたいなカードが、《ならず者》ってだけで評価が上がった」

逆に、ピックの優先度を変えるほどのものではないと主張するのはQuentinだ。
「僕が試した時は」と説明が続き、
「徘徊能力を上手く使えるように、意識的に頑張ってみたんだ。
でも、普通ならデッキに入らないような(《とげ刺し》みたいな)カードをデッキに沢山入れるより、いつも通りに《泥棒スプライト》とか《メロウ》を2・3ターン目にプレイしておいて、頃合を見計らって徘徊する方が良かった。
徘徊カードを徘徊ありきで考えるよりも、複数の呪文がプレイできるようになる中盤以降で大きなテンポを取れるかもしれないカード、みたい思ってると良いね」

期待した通り、プロは3人ともこのドラフトを決め撃ちせず、柔軟に協調戦術で切り抜けたようだ。
「単純に、この環境で決め撃ったら勝てないな、と思っただけさ」
とHornが肩をすくめる。
Tiagoもそれに賛成し、そこへちょっと付け加えた。
「どんな流れでも協調してみせる、白以外は。
白はモーニングタイドで特に強化されてて、特に《ブレンタンの爆撃手》なんかは本当に強い。
でも知った事じゃない。
攻撃するだけの2/2バニラってのがとにかく嫌いなんだ」

特定のデッキを決め打ちしない事は、その特定のデッキをドラフトできないという意味ではない。
HronとTiagoは共に、《リス・アラナの狩りの達人》やその部族の流れが好きだと言っている。
「可能なら、《エルフ》《戦士》のドラフトを狙っていく」
とTiagoも認めた。
「僕の理想形も似たようなもんで、好きなのは赤緑より黒緑かな」
Quentinには、ぜひデッキに入れたいカードが1つあるそうだ。
「《熟考漂い》だよ。
これがあったら他のカードなんて見えないし、今週末は《熟考漂い》が大漁だと良いな」

このように、モーニングタイドが環境に及ぼす影響を考えてみるのも楽しいもので、この2日間のドラフトでプレイヤーたちの見方が変わっていく様を眺めれば、新しい環境に対する十分な見識を手に入れられるはずだ。
過ぎ去る時間の中に、彼らは《エルフ》や《戦士》それに空飛ぶ魚を捕まえただろうか。


ダイス・ロールに勝ったなら……
Nate Price

ほとんどのマジックの試合において、君たちは多数の選択肢に直面する。
ここで攻撃するべきか?
相手が持ってるかもしれないカードは何だ?
この除去であのクリーチャーを倒す? それとも温存する?
選択肢は大抵突然やって来て、君に対応を迫ってくる。
その時々の選択は、どれくらい試合に影響するかが目に見えているので、重要なものかどうかは分かりやすい。
要になるクリーチャーを倒して、もしくは除去を無駄に撃って、それからどうなるかは一目瞭然なのだ。

だが、1枚目の土地を出す以前にも選択肢があった事は、プレイヤーの大半に見逃されていて、その選択が試合内容に含まれる事も気付かれない。
その選択肢の重要度を推し量るのが困難なのは、それがどのように試合内容を変えていくのかを知る事ができないからだ。
それ以降の目に見える選択肢なら、適切な対処を行って、絶好のアドバンテージに変える事もできる。
多くのプレイヤーが重要性を過小評価したり見逃している、本当に最初の選択こそが、先陣を切るかカードを1枚引くか、先攻後攻の選択だ。

驚く事でもなく、私が会話したプロたちは、この問題にしっかりした自分の見解を持っていた。
皆も良く知ってる世界を駆けるオランダ人、Ruud Warmenhovenにこの環境で先攻後攻どちらを取るかの意見を聞くと、彼は笑いながら、
「先攻、間違いない」
彼の言があまりにも最小限で、また断固としたものだった事に私はちょっと驚いたが、彼がその理由を説明するにつれて、徐々に理解できるようになった。

「この環境の速度は、重いカードが意味を成さないまでになってるんだ」
彼が指摘したのは、速い環境では先手先手を取っていく事が重要で、後攻だとそこからの挽回が非常に難しくなるという事だった。
その話の後でRuudに、Amiel Tenebaumから話を聞いてみると良い、と教えてもらった。
彼は、Amielの事前準備と環境理解を高く評価していた。
「Amielは上手いよ。
僕も彼に話聞いたりするし、自分より彼の言葉を信用してるくらいだから」

それが合図になったかAmielが隣に来て、私たちは彼を話の輪に引きずり込んだ。
「そうそう、試合で後攻を選ぶ環境なのは間違いないよ。
……対戦相手のデッキが僕のより明らかに弱いって分かってれば、ね」
その条件だったら、対戦相手よりカードを多く引いているだけで良く、切り札の力で勝利を掴むのも容易い。
そう彼も認める所だが、そんな限定的な状況を基準にすると、このフォーマットは絶対に後攻を取った方が良い事になってしまうぞ。

マジックが上手くなりたいのは皆同じだが、私はこの環境の理解だけに飽き足らず、全ての環境に通用するような理論を見つけたいと画策しているのだ。
プレイヤー・ミーティングが始まろうかという所で、Luis Scott-Bargasと話す機会を得られたので、先攻後攻のジレンマについて質問してみた。

「僕のデッキは大抵長期戦向けで、重いカードも場に出せるように仕上げるから、後攻かな。
それから、自分の手札がかなり良いのにマナ基盤が駄目駄目って時に、このカードを場に出せれば勝てるのになぁ、って事も考えると」
この考え方は、Amielが語ってくれたドロー優先理論に良く似ている。
カードはプレイされて始めて価値が出るのであり、強ければそれだけテンポを犠牲にするという悩みを抱えている。

私たちは、後攻の可能性を対戦相手のデッキを軸に話し合った。
もし相手のデッキが必ず後攻を選ぶくらい危ういマナ基盤だったら、相手の望むようにする必要もなく、後攻を選ぶのが正しい。
それなのにこちらの後攻を相手が喜ぶようなら、それは望むところじゃないだろうか?
問題は、対戦相手のデッキを正確に知っていなければ、判断基準が難しいという事だ。
「いつも後攻を取ってる人が誰か、プレイヤーの大半を見張ってないと、こっちが後攻を取ってどれくらい相手が困るか良く分からないような……」
と、LSVも言う。

ドラフトのデッキはシールド戦のそれと比べてかなり絞られたものになるため、このフォーマットで後攻を取るのはかなりのリスクがある。
これがドラフト・フォーマットで良く先攻が取られる要因であり、逆にシールド戦で後攻が好まれるのは、カードの質とマナ基盤がドラフトのものより一般的に脆弱だからだ。
この週末は、後攻を選択するプレイヤーを追いかけて、彼らがそう選択する理由を解き明かす事に費やされそうだ。


レア取るの?
Nate Price

1日目も終わって、ドラフトの様子を観戦してきた中で、プロのピック優先度の傾向にかなり興味深いカードが浮かんできた。
レアに限って特に人気があるのは……各種プレインズウォーカー、それらに並んで《不敬の命令》や《鏡の精体》だろうか。
アンコモンは言わずもがな、《叫び大口》が群を抜いている。
これらには1枚で試合をひっくり返す力があり、プレイヤーたちもその威光を拝まずにはいられない。
だが、強力な爆弾レアの一群に紛れ込んで、かなり場違いに目立っている魚が。
派手でもなく、お目にかかり難い訳でもない魚に、上記いずれのレアにも匹敵する力が備わっている。

《熟考漂い》。

その通り、そう言った!
多くのプレイヤーがこのセット最強の10枚に数える程の強さを、この一見地味な空飛ぶ魚が持っているのだ。
私も昨日のドラフト中に、《リリアナ・ヴェス》にさえ優先される光景を目撃してしまった。
(このピックは私も素直に肯定し難いのだが、重要なのは、それ程までに考えられているという事実だ)
確か昨日、強いデッキ作りに必要なカードを聞き回った時、Quentin Martinがこれを一番に挙げていて、《熟考漂い》しか要らないとまで言っていた。
これほど羨望を集めるパワーを持つコモンがあるというのは、レアな事なんじゃないだろうか?
これ言いたかっただけです、はい。


遠方より、ドラフト・ビューイング
Brian David-Marshall

ヤバかったね。
病院に2回行った以外、私はここ9日間自分の家に篭もりっきりで、社会復帰できるようになるまでは後2日ドクター・ストップが残っている。
Gregが私のコメントを伝えてくれたように、風邪を引いて東南アジアへの旅路に着いたのが全ての始まりで、その時から逃げられない罠に嵌った気がしていたんだ。
症状は悪化の一方で、かみさんは私の仕事道具一切を隠してしまった。

プロツアーが始まり、私はそこにいないものの、Jon Finkelがトップで初日を折り返し、私とはまた別の理由でRandyはトーナメント・センターに居残っている。
そんな悲喜交々もありつつ、清々しく起床できた今日を、カバレッジを読んで過ごしている訳だ。
最後に自宅からプロツアーを追いかけたのは何時だったか、もう思い出せない程なのだが、確かCarlos Romaoがマジックの才能を爆発させた2002年の世界選手権だったかな。

朝起きて最初に手を付けるのがドラフト・ビューアー−リミテッドのイベント・カバレッジにおける歴史的大革命の1つだな。
ドラフトは第1パック初手が一番わくわくする。
特に健志のドラフトはいつも最高で、彼の1パック目初手でモーニング・コーヒー吹いた。
お世辞にも強いパックとは言い難いが、《茨歯の魔女》?
私なら目に止めもしなかったと認めざるを得ない。
このパックなら3番手か4番手くらいだと私は思うのだが、これがドラフトを見る側の私と、見られる側に立つ健志の差なのかもしれない。

Jon Beckerと2人して皆の第1ドラフトのピックを見ながら話していると、中野圭貴の2パック目初手で、Beckerのディスプレイもコーヒーまみれになった。
Jonは彼のピックしたカードに目を疑った。
A)優秀で半端ないマナ補正カードであり、B)絶えず軍勢を補充してくれる、このカードを彼が見逃すはずがない。
中野は2パック目で《野生語りのガラク》を引き当て、あっさりRaphael Gennariに回してしまった−第1パックの早い段階で緑のカードを複数ピックしているのに!!!

中野に緑が流れて来てないのは明らかで、彼のドラフトは青黒へ方向転換していたのだ。
彼のピックにJonといちゃもん付けてるようでは、試合を終わらせる緑のカードより《銀エラの消し去り》を取ってみせた中野の真意は分からない。

とても興味深いドラフトだった。
まだチェックしてないなら、今すぐ見た方が良いぞ。
君たちが津村健志の席に座ったとして、どれくらい同じ正解を選択できるかな?
そして全部ピックし終わったら、今度は次のドラフト・ビューアー、それからJon FinkelやNicolai Herzogにも挑戦してみよう。


傾向

トーナメントを目前に控えたプレイヤーなら、環境の現在の傾向を勉強して損はないだろう。
構築戦イベントなら、傾向とはすなわちメタ・ゲームであり、それに沿ったデッキを選択し、そこに焦点を合わせたテスト・プレイを行う。
今日なら限定戦だが、統計的に強いアーキタイプを知る事もそうだし、ドラフトの流れを予測する事もそうだ。
もし、あるアーキタイプが環境のデッキ全体に70%の勝率を持っているなら、そのアーキタイプは他と比べて確実に強いという事になる。

私はここPTクアラルンプールでの傾向を調べて回り、その結果は特に驚かなかった。

青はこのフォーマット最強とされている色で、コモンは部族・非部族共に強力なカードで溢れている。
《銀エラの消し去り》《熟考漂い》《霊気撃ち》それから《やっかい児》は、どれも初手で取っても構わない強力なカードだ。
だが、それよりも重要なのは、青関連の部族シナジーがいかに強力かという事だ。
この環境の《フェアリー》と《マーフォーク》の相乗効果は、他のどの組み合わせよりも優れている。

今週末、高順位に着けたプレイヤーのドラフトを見ると、その傾向は確かに現れ始めていた。
Cuillaume Wafo-TapaとJon Finkelの8つのデッキのうち6つは、この傾向に沿った青を基調にしており、そのうちの3つがほぼ青単のデッキだった事は、この色の強さへの裏付けになるだろう。
まぁ青いデッキは大抵コントロール寄りになるので、そういう傾向がWafo-TapaやFinkelのプレイ・スタイルに合致しただけかもしれないが。

それとは別の上位人気デッキには、私も驚かされた。
Mattias KettilとRogier Maatenは、《沼》と《森》を背景に上位をキープしている。
彼らは2人で6つの《ツリーフォーク》メイン《エルフ》少々のデッキをドラフトしていて、私が本当に驚いたのが、Rogierはこのデッキを非常に評価していた事で、説明を受けるに、
「こいつはドラフトでかなりの不人気デッキだから、凄く強いカードが案外回ってきたりするんだな。
決め撃ちドラフトをやろうとは一回も思ってないんだけど、自然とこんなデッキが出来ちゃうんだ」

《ツリーフォーク》に相応の潜在能力がある事は、私にも分かる。
クリーチャーは全部固いし、緑では《エルフ》に注目が行って誰も見向きもしない。
しかし、私が《ツリーフォーク》デッキを組んだ時は、どれもかなり良い出来に見えるのに、展開が遅過ぎて何もできずに終わってしまう事ばかりで、それ以降は苦手意識を持つようになっていた。

《ツリーフォーク》は、他の部族と比べてちょっと重いボディにアドバンテージが内蔵されており、その芋蔓式の能力で試合を運んでいく。
場に《果樹園の管理人》《茨歯の魔女》それに《戦杖の樫》がいるとすると、君が《ツリーフォーク》をプレイする度、ライフを得て、クリーチャー1体を除去し、自分のクリーチャーが大きくなる訳だ。
後は盤面が傾くのも時間の問題で、場に出せさえすれば、その強固な身体を止める事は難しい。

このセットはクリーチャー・タイプを特に強調したものとなっているが、どれくらい部族を重用するかについては2つの見解がある。
ローウィンとモーニングタイドでは、セット毎にクリーチャー・タイプを注視していく事になるが、今週末では、この件よりカードの質を最優先しているプロ・プレイヤーもいた。
《やっかい児》《熟考漂い》《休賢者》とその他色々の青いデッキが出来上がったら、何デッキと言うべきだろうか?
《フェアリー》? 《エレメンタル》? 正直なところ、青デッキと言うしかない。
部族を揃える事に固執せず、部族テーマを中核にするよりカード1枚毎の補助に回す、こういうデッキの方が実は多いようだ。

だが、デッキ内の部族を統一する価値があるカードも何枚かある。
《秘密を溺れさせる者》《リス・アラナの狩りの達人》それに《皺だらけの主》が良い例で、該当タイプのクリーチャー数を増やせば増やすほど真価を発揮してくれる。
これらのカードをすでに持っているなら、該当クリーチャー・タイプのカードをそうでないものより優先するようになる。
というのは、多少のカード・パワーの差なら、上記カードとの相乗効果の方が強力だからだ。
前段落とは正反対の事例と言える。
まぁ、色それぞれのメカニズムがあるから勝手にシナジーも生まれるし、カード単体の性能重視でも十分良いデッキになる。
クリーチャー・タイプを気にしなかったけど何とかなったって事、皆もあるでしょ。
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2008/02/17(日) 15:10:28 | | #[ 編集]
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